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く実施可能であるが、ボトム部の引寄せ固着・溶接が課題となる。より経済的で工期が短く信頼性の高い洋上での引寄せ固着・溶接方法がメガフロート技術研究組合などで開発・実用化されつつある。

 

(2)コンクリート製浮体構造物
コンクリート製の浮体構造物は、?@防蝕等耐久性に優れている、?A施工性の容易さ、?B鋼製に比べて低廉である等の理由で、従来から主として小規模な浮桟橋で採用されており、ドックやヤードで建造されていた。しかし、最近では大水深や波浪条件の過酷化に対応して、構造物の強度、耐久性、靭性の向上が要求され、軽量高強度コンクリートや高流動コンクリート等の材料面や楕造解析法の進歩により、プレストレストコンクリート構造(PC構造)や鋼とコンクリートの長所を生かした合成構造(SCハイブリッド楠造)の大型浮体構造物が建造されるようになった。
a)PC浮体構造物の建造
昭和52年頃から造船所の海洋ドックを利用して長さ20〜30mのPC製の浮防波堤や浮桟橋が建造されているが、最近になって更に大規模な構造物への要求が高まっている。
広島港宇品地区では、美観性や瀬戸内海の特徴である潮位差が大きい等の立地条件を考慮して、5,000G.T.級の国際観光船を係留できる、長さ150.0m、幅30.0m、高さ4.0mの国内最大規模のPC製浮体式係船岸が建造された。この浮桟橋では、5分割した浮函を陸上で製作し、大型起重機船(4,100t吊り)で進水させ、各浮函を洋上で接合して一体化する工法が採用された。
浮函はその構造上、水密性が要求されることから、コンクリート製浮函の製作段階において、ひび割れの発生を防ぐ各種対策が必要となる。
?@側壁や隔壁のコンクリートは、底版と作業ヤード定盤間の摩擦拘束により、収縮時に引張応力を受け、ひび割れを誘発するため、型枠と底版との間の摩擦力を低減する必要がある。摩擦力の低減は、導入するプレストレスの平均化にも効果がある。
?A高強度なコンクリートを使用するため、コンクリート硬化時の発熱量が大きく、練り混ぜ水のプレクーリングや被膜養生および散水養生といった乾燥収縮対策を行うとともに、硬化時の温度管理を十分に行う。
?B浮函の吊上げ浜出し時には、吊り枠等を用いて大きな変形が起こらないようにする。
浮体の洋上接合は、静穏な海域でバラスト調整により函を水平に保ち、ジャッキで止水パッキンが所定の圧縮量になるまで引き寄せ、接合面にグラウトモルタルを注入し、硬化後PC鋼棒を締めつけてプレストレスを与える。
この工法の特徴は、分割製作した構造物を現場付近で接合し、大規模な構造物を築造することにあり、沿岸域開発の多様化への対応が容易になった。
b)SCハイブリッド浮体構造物の建造
SCハイブリッド構造とは、鋼板とコンクリートをずれ止めを介して力学的に合成した複合構造のことで、コンクリート版厚を薄くでき軽量化が可能であること、内面が鋼板の

 

 

 

 

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